津家庭裁判所四日市支部 平成2年(少)113号 決定 1990年10月19日
主文
少年を中等少年院に送致する。
理由
(非行事実及び法令の適用)
司法警察員作成の平成2年1月25日付少年事件送致書と同一であるから、これを引用する。
(処遇の理由)
少年は、鹿児島県種子島の低文化多子貧困家庭で生まれ、父親がアルコール依存症で家族を虐待し、姉三人が次々と非行化していく家庭で成育した。小学生のころから深夜徘徊で補導されたり、車上狙い、空き巣などを重ねて児童相談所の指導を受け、中学生になると無断外泊、原付の無免許運転、シンナー吸入、現金窃盗などを繰り返し、教護院に入所したが、一時逃走した時に車を盗み、車上狙い、空き巣を反復し審判不開始となった。義務教育終了後、三重県で工員として就職し定時制高校にも通ったが、すぐに夜間侵入盗で検挙され、しばらく事件を起こさずに生活し、優れた学業成績をあげた時期もあったが、寮の規律違反で解雇されるに至った。その後は怠学、欠勤が目立つ中で生活態度を乱してスナックで働くようになり、その帰り道に本件非行を犯し、住居不定の状態で無免許運転を累行し、逮補、観護措置となった。
少年は、社会規範意識が希薄で、思い付きで気ままに行動してしまう一方、他人の考えを受け入れる柔軟性がなく、自己や現実を直視することを避ける傾向が顕著である。このため、安定した枠の中では大きな逸脱もなく生活していくが、いったん崩れると目先の思惑や独善的な考えから職を転々として非行を犯し、面倒を見てくれた人の好意をも裏切ってしまう結果となる。
本件では、保護会への補導委託による試験観察を試みたが、すぐに無断退去して所在不明となり、その後所在が判明して在宅試験観察となった。しかし、自動車販売店に勤務していると偽り続けながら、暴力団員の経営する新聞社で働いたり組事務所で生活したりし、裁判所との接触も滞りがちとなり、不義理をして鹿児島に勝手に逃げ帰ってしまった。
処遇を検討するに、上記のとおり、少年には重大な性格上の問題点があり、社会生活への適応は容易でないこと、その問題点は成育上の根深いものであり矯正には多大の困難が伴うこと、家庭はすでに崩壊しており監護能力はないこと、これまでの経緯からみて、保護観察の処遇に容易に乗らないことは明らかである。以上からすれば、この機会に落ち着いた生活の中で自己をみつめて問題点を除去し、優れた知的能力など本来の資質を発揮すべく、徹底した矯正教育を施すのが相当であると認められる。
よって、少年法24条1項3号、少年審判規則37条1項を適用して、主文のとおり決定する。